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讃岐の岡内千金丹薬売り
讃岐の国、香川県は瀬戸内海に面し、気候は温暖、古来天災による被害が少ない風光明媚なところです。その讃岐に、明治、大正を経て、昭和も戦前までの3代にわたって、全国に販路を広げた讃岐薬業、「岡内千金丹」の薬売りがありました。ここに言う薬とは、すなわち今日の家庭薬です。この時代、讃岐は家庭薬王国と言われていて、最盛時には県下に大小300余の家庭薬製造業者があって、その生産高は讃岐の重要産業のひとつでもありました。
この讃岐売薬の一つ、“千金丹”の歴史は、初代・岡内喜三が考案した事から始まります。“千金丹”は板になったチョコレート色の薬で、銀が塗ってあり、1センチ角に筋がついていて、折ってしゃぶるようになっています。特に腹下りには良く効いたそうで、「永代記録」によると、明治天皇の伯母にあたる京都瑞竜寺の村雲尼公が明治20年3月に各地を巡釈して高松の日妙寺に泊まった際、尼公が腹痛を発されました。そこで、“千金丹”を差し上げ、服用したところ早速治ったので、大層お喜びになり、村雲尼公の名前を商標に用いる事を許されたとのことで、この後“千金丹”は大きく世に出回るようになるのです。
売り子たちは、毎年、春3月に高松を出発し、10月の高松、岩清尾八幡の祭り前に帰郷したといわれ、この行商の一団は、全国各地で一種の風物詩であったそうです。
荒井とみ三 著「讃岐民俗図誌」第六巻 看板考より引用